医局員コラム

第35回皮膚脈管膠原病研究会 大阪大学大学院医学系研究科分子病態医学
皮膚科教授 片山一朗

2012.2.16-17 東京(京王プラザホテル)
土田哲也教授(埼玉医大皮膚科)

 毎年恒例の皮膚脈管膠原病研究会に出席した。今回は伊丹始発の羽田行きに乗り、なんとか血管炎のセッションに間に合った。済生会中央病院の陳科栄先生、聖マリアンナ医科大学の川上民裕先生、北里大学の勝岡憲生先生などの熱い討論を大いに楽しんだ。特に抗リン脂質抗体症候群の最近の病因論やワーファリンの使用法など大いに参考になった。
午後は壊疽性膿皮症とバイオロジックス療法、IgG4関連Mikulicz病の話題、SLEなどの新しいトピックスが発表され、初日の最終セッションは私もシェーグレン症候群関連の座長を務めた。2日目は皮膚筋炎、強皮症、成人Still病関連の演題が発表された。特に新しい自己抗体(TIF1γ)の悪性腫瘍合併皮膚筋炎の早期診断での有用性に関してはホットな討論が繰り広げられ、今後の日常臨床での測定への普及が望まれる。大阪大学皮膚科からは糸井沙織(水疱と白斑をともなった男子SLE),中野真由(トシリズマブによる好中球性皮膚症Paradoxical SLE)、北場俊(悪性腫瘍を伴わない皮膚筋炎におけるNSEの意義)、田中文(Flame figureを認めた蕁麻疹様紅斑)の四演題が発表され、いづれも多くの質問、意見が出され得るところも大きかった。
 本研究会は我々にとっては二世代以上前になる西山茂夫先生(北里大学名誉教授)、植木宏明先生(川崎医大名誉教授)、坂本邦樹先生(奈良医大名誉教授)など錚々たる先生達が中心になって設立された会で、奇しくも私が医者になった年に第一回が開催された。80年代当時は膠原病のみならず血管腫や腫瘍などの演題も多く出題され、多くの高名な先生方が熱い議論をされていたのが若い私にとり刺激的でまた診療や研究意欲を大いに高めてくれた。この会はスライド一枚で問題点を呈示し、十分な議論を行うことがポリシーであり、最盛期には夜10時を過ぎても会が終了せず、会長の先生がやきもきする姿を今も懐かしく思い出す。昨今インターネットの普及により多くの情報を瞬時に手に入れることが可能な時代になり、また画像診断なども普及してきたが、やはり臨床の現場の最前線で患者を診る医者が本音で病気の成り立ちや治療を討論することが若い先生方にはなによりの勉強になるかと考えた次第である。大学院改革や初期研修制度の導入前後のある時期、世代交代と重なり、一時的にこの会もやや勢いを失いつつあったが、ここ2〜3年は若い世代の参加が徐々に増加し、熱い議論で会場が盛り上がることも増えてきたと感じる。臓器別診療が主流の現在、患者の皮膚から得られる情報を治療にフィードバックできる皮膚科医の存在価値は益々重要になってきている。是非教室の若い先生もこの会に参加して、今膠原病、血管病変の診療に何が求められているかを肌で感じて頂き、討論の輪に積極的に参入して頂きたい。
2012年