学会参加印象記

XVII Pan American Society of Pigment Cell Research (PASPCR)
President: Greg Barsh (Hudson alpha institute)
Park City, Salt Lake City
2012.9.19-22
片山一朗
   
 4年前から白斑の診療ガイドラインの作成と新規治療開発の厚労省班研究に関わり、色素細胞関連の学会に参加する機会が増えているが、今年からさらにセンダイウイルスベクター(HVJ-E) の悪性黒色腫への創薬事業が厚労省のプロジェクトに採択されたことで、本格的にメラノーマの勉強を始めることになった。
今回参加した、PASPCRはアメリカ色素細胞学会の年次総会で、会場となったSalt Lake のPark City周辺は冬季オリンピックが開催された競技会場となったところで、素晴らしい環境のもと3日間、学会を楽しんだ。
学会のテーマは「The power of genetics and pigmentation」で、前日には尋常性白斑と悪性黒色腫の患者会との交流会が開催されており、研究のみでなく、臨床への視点を持つ学会であることが特徴のようであった。初日は色素細胞の基礎研究、2日目は主として、尋常性白斑、3日目が悪性黒色腫のプログラムが組まれていた。
 印象に残った演題としては初日の蝶の翅の模様形成に関わる遺伝子の話で、数年前に読んだショーン・B・キャロルの「シマウマの縞、蝶の模様」を思い出しながら興味深く聞いた。またこの分野ではゼブラフイッシュやチョウチョウウオの模様の研究でも面白い研究が進展しているようである。色素異常症ではOCA1Bなどの遺伝性の疾患にTyrosinの分解阻害薬(Nitisinone)を投与することで、皮膚や虹彩の色素再生が可能であることをNIHのBrian Brooksが発表し、質問が相次いでいた。NitisinoneはFDAも認可しているとのことで、遺伝性色素異常症への治療が可能になるかもしれない。阪大でも金田先生が結節性硬化症や尋常性白斑へのラパマイシン外用の有効性を報告され、現在その創薬化に取り組んでおられるが、Nitisinoneの併用でより効果があがるかもしれない。悪性黒色腫に関しては、BRAF阻害薬の登場以降の流れで、ほとんどがあらたな治療標的となる分子の探索研究で、Mutation Huntingとも言える演題がそのほとんどを占めたが、今後の臨床応用が期待されると同時にHVJ-Eとの併用など新たな研究課題の参考になる発表が多く、参加した意義があった。阪大からは種村、寿、田中(文)先生が発表され、コロラド大のSpritz教授やNorris教授ともお話しできた。また現在John Wayne Cancer Instituteに留学している清原英司先生が家族ともども参加され、久しぶりに再会できたことも嬉しいできごとであった。彼とは帰路、彼のラボに立ち寄り、現在進行中の悪性黒色腫のCirculating tumor cellの今後の共同研究などの打ち合わせをした。
 会場となったSt Regis Hotelからは紅葉の綺麗な山々の景観が望め、我々も会の合間にトレッキング(?)を楽しんだ。懇親会は今回の学会運営の中心となられたユタ大学のSancy Leachman教授のご好意によりHuntsman Cancer Instituteで開催された。会の前に研究室や病棟、化学療法センターなどを案内していただいたが、そのスケールの大きさと患者への行き届いた配慮に、アメリカという国の凄さを再認識した学会でもあった。
平成24(2012)年9月26日掲載