教室関係コラム

2012.10.29

第22回国際痒みシンポジウム

第22回国際痒みシンポジウム

片山一朗

会長:遠山正彌(大阪大学名誉教授、地方独立行政法人大阪府立病院機構
会場:ベルサール神保町
会期:2012年10月6日

 痒みの基礎と臨床に関する専門的な研究会で、東京大学名誉教授の石橋康正先生。大阪大学名誉教授の吉川邦彦先生、大阪府立羽曳野病院前副院長の青木敏之先生により開始された研究会で、毎年東京と大阪を交互に移動して開催されている。解剖、生理、薬理などの基礎研究者から臨床各科に亘る医師、企業、医療関係者など多くの先生が参加される会でわたしも第一回から参加している。
平成19年の厚労省の調査研究で痒みは有訴率で第10位にランクされる、重要な症候で、米国でも痒み研究へのグラントが大幅にアップされ、痛みとともに重要な研究分野になりつつある。また昨年の東北大震災でも慢性期の皮膚疾患として痒みのコントロールが重要であったことも聞いており、より多くの若い研究者の参加がのぞまれる研究会の一つである。
今年の研究会は海外からの招待講演が2題、指定演題が5題、一般演題が11題であり、私は午後から別の用務で欠席したが、遅くまで議論が続いたと聞いている。 
  私が聞いた講演では資生堂の傳田光洋先生の「Sensory system of keratinocyte: association with itch」が印象に残った。傳田先生は「皮膚は考える(岩波科学ライブラリー)」や「第三の脳(朝日出版社)」、「 賢い皮膚―思考する最大の“臓器” (ちくま新書)」など多くの著作でも知られている方で、皮膚感覚として従来漠然ととらえられていた知覚、認識機構を新たな手法で解析され、中枢に近い認識機構を皮膚のケラチノサイトが持つことを報告されている。また皮膚科領域からは、京都府立医大の加藤教授が血小板と痒みの関わり、大阪大学の室田先生がサブスタンスPで誘導される新たな神経成長因子、Arteminとアトピー性皮膚炎での温度過敏との関わりを述べられ、活発な質疑応答がなされた。来年は大阪で東京慈恵医大の江畑俊哉先生を会長として、また国際痒み学会がボストンで開催される予定である。痒みの研究に興味ある方は是非参加して頂きたい。会員登録は以下のホームページから。

国際痒みシンポジウム事務局:http://netconf.eisai.co.jp/itch/index.html

平成24(2012)年10月29日掲載

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