学会参加印象記
第62回日本アレルギー学会秋季学術大会 
会頭:東田有智 近畿大学教授
会場:大阪国際会議場    
会期:2012年11月29日〜12月1日
片山一朗
   
 大阪大学皮膚科が担当した2012年の春季大会に引き続き、大阪で秋季大会が開催された。前日の28日から理事会や委員会があり4日間のフル参加で少し疲れが残った学会でもあった。今回は呼吸器内科教授が会頭ということもあり皮膚科からの演題や食物アレルギー関連の演題がいつもより少なく、その分余裕をもって特別講演などを聞くことができた。参考になったのは近年増加しているアレルギー性気管支・肺アスペルギルス症(ABPA)の講演で、国立病院機構相模原臨床研修センターの谷口正美先生が最近の知見を紹介された。胸部X線像から結核と診断される例が多いことや、喀痰培養からアスペルギルスが培養しにくく、診断が難しいことに加え、有効な治療法が確立されていない現状を知ることができた。イトラコナゾールの有効例を示す論文が最近幾つか出ているとのことであるが、同時に抗IgE抗体療法が劇的に効く例が報告されているとのことで真菌症と真菌に対するアレルギーの両者をうまく治療する必要性があるようである。特別講演でも大阪大学の審良静男先生が自然免疫とM2マクロファージというタイトルで講演されたが、腸管、気道、皮膚、鼻粘膜など外界と対峙する臓器が主たる病変であるアレルギー疾患では感染症と病原微生物に対する免疫応答が複雑に絡み合って、病態が形成されていくことを先生の最新の研究結果からお話し頂いた。特にJMID3というあらたなTLR誘導性の分子がM2マクロファージの誘導に必要なこと、これらの分子やその下流にあるIRF4,Trib 1などの転写因子が欠損すると骨髄からのM2マクロアファージ誘導には影響を与えないが、脂肪組織での数的減少が見られ、メタボリック症候群の発症に関わることなどを精力的に語られた。我々の教室でも創傷治癒や組織線維化でM2マクロファージが関与している可能性や、メタボリック症候群の脂肪組織でその発現上昇が見られる11βHSD1がIL1やTNFなどの炎症性サイトカインの誘導作用を持つことを研究しており、審良先生のお話は大変参考になった。最終日には現在大きな問題となっている、アレルギー専門医制度を考える特別討論会が開かれ、アレルギー疾患を取り扱う臨床各科からの専門医教育の現状報告と今後の方向性が議論されたが、専門医認定機構の示す総合診療医の育成と総合アレルギー医がどのように棲み分けていくのか、専門医の地域的な偏在の解消など今後の大きな議論のポイントになるかと思われるが、現状では早くても2,020年頃を目指しての改革のようで先行きは不透明である。私自身は埼玉医大内科の永田真先生が示された大学でのアレルギーセンターは今後の良いモデルかと思うが、大学、診療形態の壁を越えた地域での横断的診療と専門医教育組織の構築が現実的な対応策かと考える。大阪大学皮膚科からは松井先生がOAS、田原先生が高齢者紅皮症、高橋先生が皮膚バリア機能の季節変動とアトピー性皮膚炎の発疹型に関する口演、室田先生がアトピー性皮膚炎と汗の話題でシンポジストとして講演された。いずれも活発な議論が行われた。
宮本昭正先生から感謝状を授与される審良静男教授
平成24(2012)年12月3日掲載