学会参加印象記
第37回日本研究皮膚科学会(JSID)
会長:戸倉新樹浜松医科大学皮膚科教授
会場:那覇 ロワジールホテル、パシフィックホテル
会期:2012年12月7−9日
片山一朗
   
 今年最後の学会となる研究皮膚科学会に参加した。以前は毎年12月に開催される免疫学会がその年を締めくくる学会であり、その年の仕事を振りかえり、次の研究のアイデアを考えるのが恒例になっていたが、ここ数年は研究皮膚科学会が免疫学会にかわるようになってきた。
 今回は前JSID理事長の戸倉さん(研究皮膚科学会では「さん」付けで呼ぶことになっている)が会長を務められ、大会テーマは「 Geographic pivot and scientific nitch」とされていた、沖縄が東アジアの玄関であるのみでなく、世界の研究者のアクセスが良いことから選ばれた会場であり、テーマとのことであった。大会前日の評議員会に引き続き、会長招待会にお招きただいたが、驚いたことに出席者の1/3以上が海外からのゲストであった。これは来年英国エジンバラで開催されるIID(世界研究皮膚科学会)を見据え、ESDR(欧州研究皮膚科学会), SID(米国研究皮膚科学会)、KSID(韓国研究皮膚科学会)、TSID(台湾研究皮膚科学会)、ASDR(オーストラリア研究皮膚科学会)などの関係者をたくさん招待されていたのに加え、2009年の橋本さんが福岡で開催された学会から英語が公用語となり、アジアからの参加者が飛躍的に増えたことによるとのことであった。
 翌日からの大会は戸倉さんの挨拶に始まり、Plenary session(全員が参加して討論に加わる演題で、毎年全演題の5%前後が選ばれる)が引き続き行われた。発表する本人にとっては大変な名誉であるが、関係者(直接指導者)もまた緊張の連続で発表が終わった後は皆さん、満足そうな顔であった。阪大皮膚科からは室田さんが2日目午後にアトピー性皮膚炎で暖まると皮膚が痒くなるメカニズムを発表された。サブスタンスPが線維芽細胞から誘導する新規の神経成長因子であるArtemin見つけ、論文化まで10年近くかかった研究で、講演を聞かれた先生からの評価も極めて高く、室田さんなりに一区切りついたのではと思うと同時にフィラグリン全盛時代の今、次に解決すべきアトピー性皮膚炎の問題もまた見えてきたのではと思った。教室からは糸井さんが皮膚ケラチノサイトでのステロイド代謝に関わる研究、加藤さんが糖鎖修飾酵素GnTVが強皮症の病態形成に関わり、特にM2マクロファージの誘導に必須であることを報告された。どちらの発表も立派に英語でこなされ、質問にもしっかり(?)答えられていた。ちなみに隣にいた、友人のIさんも教室の大学院生のPlenary発表の予行のために朝2時過ぎまでつきあっていたそうである。お二人の研究を指導された寺尾さんご苦労様でした。教室関連の演題以外ではJSID賞を受賞された千葉大の神戸さんのCAPSなどの自己炎症症候群に関する講演「The Genetic Fidelity of the Dead or Dying が印象に残った。一人の患者さんからの出会いが受賞に繋がる研究の始まりで、今世界の研究をリードするまでに精力的に取り組んでこられた研究成果のお話を伺い、そのブレない姿勢に心から敬意を表したい。JSIDの目標である国際化に加え、Physician Scientist育成の見本になるような研究で、若い先生も是非日頃の日常診療のアンテナを高く張り巡らせ、未知の病態を持つ、また治療法のない患者さんとの出会いを大切にして、生涯つきあえる研究テーマを見つけて頂きたいと願う。初日の懇親会は途中で抜け出し、ホテル近くの沖縄料理店に移動し、安くて美味しい沖縄料理を満喫した。東京医科歯科大にいた頃エジプトから留学してきたミニア大学のSherif Awadさん、和歌山のJSIDでも深夜までおつきあい頂いたハイデルベルク大のEnkさんも参加して楽しい時間を過ごすことができた。2日の夜はきさらぎ塾のチューターとその塾生を中心とした「Ganbare Night」が企画され、OBの先生や海外からの先生もたくさん出席され、藤本さんのDrink Hardの乾杯に引き続き、夜が更けるまで、皆さん会を楽しまれたようである(私はさすがに途中退席させて頂いた)。
来年のIIDに続いて、2014年は大阪大学が大会を引き受け、12月12−14日、大阪Expo Hankyu Hotelで開催予定である。大会テーマは「Global Tuning of Innovative Dermatology」として、研究の原点を討論できる学会にできればと考えている。
JSID Award lectureの受賞講演 千葉大 神戸直智さん
Diploma of the Dermatological Scientist受賞式 楊さん
平成24(2012)年12月10日掲載