学会参加印象記
第31回日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
会長:原田 保 川崎医大耳鼻咽喉科教授
会場:倉敷市芸文館
会期:2013年2月7−9日
片山一朗教授

 倉敷で開催された耳鼻科領域のアレルギー関連学会に招待され、教育講演で「花粉症と皮膚のアレルギー」をテーマにお話しさせていただいた。現在厚労省の研究班で思春期のアレルギー疾患患者の動態研究と口腔アレルギー症候群の疫学と病態研究を行っている関係で、耳鼻科の先生の知己も増え、花粉症の勉強をする機会が増えた。講演後、兵庫医大免疫学教室の善本教授から経皮的にスギ花粉に感作された場合、スギ花粉皮膚炎としての症状を呈しやすいのかとの質問を受けた。私もそのような仮説を以前から考えており、表皮ケラチノサイトが産生するTSLPの関与やスギ花粉抗原がInflammasomeを刺激することで遅発性の皮膚反応を惹起する可能性をお答えした。アトピー性皮膚炎と食物抗原の経皮的感作や茶の雫事件など皮膚と粘膜で抗原提示細胞などが異なる可能性も指摘されており、今後の重要な研究テーマかと考える。また、現在議論を呼んでいるIgG4関連疾患(systemic IgG4-related plasmacytic syndrome(SIPS)とMikulicz病に関してもホットな討論があった。南東北病院の今野先生は「木村氏病や耳下腺腫瘍でもIgG4 陽性細胞の浸潤が見れることより、その独立性に問題があることや、現代人がIgE同様IgG4抗体を非特異的に産生しやすい環境にいるのでは」というコメントをされていた、ただ本症でみられる後腹膜線維症など組織線維化がシェーグレン症候群を含め過去Mikulicz症候群の鑑別疾患では見られないことより、今後の病態解明の手掛かりになるかと考える。

 引用:

(IgG4関連疾患でみられる臓器病変。札幌医大ホームページより引用)

札幌医科大学内科学第一講座 山本元久先生
「ミクリッツ病と全身性IgG4関連疾患(SIPS)」
出典:
http://web.sapmed.ac.jp/im1/SubPage/04_Kenkyu/Kaisetsu03.html

またいつもの皮膚科の学会と異なり、殆どが男性医師で、発表の場でも若い先生が高名な偉い先生からの厳しい質問に対して立ち往生する姿も目に付いたが、指導医に頼らず、討論する姿は若々しい新鮮さを感じた。いわゆる体育会系の学会で、先輩が後輩を厳しく、かつ暖かい目で育てようとする姿勢が強く感じられた。最近の多くの皮膚科の学会では、討論も少なく、たまに名誉教授の先生が反論のできないような厳しい質問をされるとショックで立ち直れなかったり、共同演者の方を向いたまま、一言も言葉を発しない若い医師もよく目にするが、学会での真剣勝負こそ学問の進歩や後継者の育成に欠かせないし、そのような場に積極的に参加することでプロとしての責任感や職業意識も生まれてくると考える。
アカデミズムとは逆に昨今スポーツ界では、指導者によるパワーハラスメントが大きな問題となっており、大きな議論が起こっている。私も昔運動部にいたが、特にパワハラなど感じたことがなかったし、研修医の頃の学会発表でも徹底的に論破された記憶があるが、その多くは今になって大きな財産になっている。時代は移り、回診などで、手抜きのプレゼンなどをされた場合や不都合な事実を隠していたりされると、時に怒ることがあるが、驚いたことに翌日退局届けを出す研修医も経験したし、他大学の教授からも同じような話を聞く。これはすべての事象にあてはまるかと思うが多様な背景のある事件を一律の同じ価値基準、判断で対処する風潮が日本、そして世界を支配する現状のせいかとも考えるし、匿名の無責任なネットへの書き込みの影響が大きいと思う。実際英国映画などでも授業を妨害するような学生に対しては厳しい体罰が下される場面をよく目にする。話は大きく脱線してしまったが、指導する側の熱意と受ける側の思いがすれ違うことは身近でもよく経験する。もって自戒としたい。
最後になるが今回の学会で感じた点として、アレルギー学会で聞く耳鼻科の演題とは異なり、耳鼻科の先生方も我々同様、臨床や研究手法に他領域の最新の知見を取り入れ、その診療の幅を広げられていること、退官された高名な先生でも、現役時代の研究を継続され、筆頭で堂々と素晴らしい講演をされていたことであった。たまにまったく関係のない学会に参加することも有益であることを再確認した。原田教授には心よりお礼を申し上げたい。
平成25(2013)年2月19日掲載