学会参加印象記
第437回日本皮膚科学会 北陸地方会
熊切正信先生退任記念学会
会場:福井商工会議所
会期:2013年2月24日
大阪大学医学部皮膚科学教室教授
片山 一朗
   
 熊切正信福井大学皮膚科教授退任記念地方会に出席した。熊切先生は私の北大の先輩で、私は1996年の7月に長崎大学の皮膚科教授に就任したが、熊切先生は8月に福井医科大学の教授に就任され、皮膚科教授としては同期生にあたる。就任後は毎年同門会誌「越前だより」を送っていただき、先生の教室が発展していく様子や、色々な苦労話、先生御自身が撮影された福井の四季の写真を楽しませて頂いた。熊切先生は長年日本皮膚病理組織学会の理事長や日本皮膚科電顕研究会(現:日本皮膚かたち研究学会)の会長などの要職を務められ、多くの学会で皮膚病理に関するシンポジストやパネリストを務められ、親交のあった多くの先生が参加されていた。ただ恩師の三浦祐晶北大名誉教授やKen Hashimoto先生は体調をくずされ、欠席とのことで残念であった。学会は朝10時から開始されたが、思いの外福井の街は雪が少なく、2月としては暖かで、春も近いと感じられた。一般演題では腫瘍に関するものが多く、齋田俊明先生や大原国章先生、熊野公子先生などの厳しい質問が相次ぎ、午前中ですでに1時間の時間オーバーで事務局長の清原隆宏準教授がヤキモキされていた。私も「高齢者紅皮症の臨床的検討」という演題を発表させていただいた。また戸倉新樹教授が「IL22産生性CD8陽性Sezary症候群」、竹原和彦教授が「単純血管腫様の外観を呈し、シクロスポリン内服が有効であった小児剣創状強皮症」の興味ある症例を筆頭で発表されていた。
 熊切教授の記念講演は「電顕で垣間見た皮膚病変」というタイトルで、先生の北大時代、米国留学中、福井医大に亘る長年の研究成果や貴重な症例、研究仲間との交流、趣味の鉄道写真などを織り交ぜながらお話しされた。特に電顕で皮膚病理を見るとHE染色では見えない所見が見えることや細胞間、周辺組織との相互作用などが驚くほど鮮明に観察でき、様々な疾患の発症メカニズムが理解できることを静かな口調でお話しされた。今の皮膚病理学はAckermanの病理学に代表されるようにアルゴリズム診断が主流であるが、臨床所見、HE所見に加え、電顕的な見方を加えることで、皮膚という臓器で繰り広げられる豊穣な生命現象が理解できることをあらためて認識させられた講演であった。

 先生が執筆された「皮膚病理を読む。皮膚病理がみえてくる」は5,000部を越すベストセラーとのことで、わたしも湿疹病変の病理を担当させていただいたが、どのHE組織写真にも先生の簡潔なイラストが加えられ、「熊切病理学」とも言えるワールドが勉強できるだけでなく、皮膚疾患の成り立ちの根本的な理解ができる素晴らしい教本であり、若い先生にも是非一読していただきたい。

退官後は長らくの単身生活に別れを告げ、ご家族の待たれる札幌に戻られ、皮膚科医としての仕事を継続しながら趣味や社会貢献にも時間をさきたいとのことであった。最後になるが福井医大〜福井大学を通じて福井大学医学部の発展に大きな貢献をされた熊切先生の今後のご健康とご活躍を祈ります。
長い間ご苦労さまでした。
平成25(2013)年2月26日掲載