学会参加印象記
第29回日本臨床皮膚科医会・臨床学術大会
会場:ウェスティンナゴヤキャッスル
会期:2013年4月6~7日
大阪大学医学部皮膚科学教室
室田浩之
   
 4月6、7日、名古屋で開催された日臨皮学術大会に参加した。その前日と前々日に行われた大学の新入生検診での疲れからか、鼻孔周囲に単純ヘルペスが播種した恥ずかしい状態での参加となった。しかし、身につまされる発表の数々に疲れを忘れてしまった。

 初日特別講演でノーベル物理学賞を受賞された益川敏英さんのお話をうかがった。「現代社会と科学」というテーマで科学の歩みを偉人達のエピソードを交えて紹介された。ファーブルとパスツールの話は昆虫博士であるファーブルはカイコの疫病の対処が分からないため感染症に詳しいパスツールに相談し、カイコのことなど見た事もないパスツールが疫病をおさめたというものだった。その他、人工衛星の表面の冷却に使われるヒートパイプの原理をソニーがトランジスタの冷却に応用し大成功を収めたエピソードも紹介された。専門性や興味のまったく異なる人たちの結びつきが科学の発展、経済の発展につながったというものだ。私も皮膚や医学とは異なる分野の方々と交流していきたいと考える。


 翌日の浅井先生、江藤先生の「あえチョイシリーズ」は臨床皮膚科医会の醍醐味とも言える、日常診療で役に立つ「チョイ技」を実践的に紹介された。こういう内容は若い先生方にも是非聞いていただきたい内容だ。日常診療で役立つと言えば、ポスター金賞では東邦大学大橋病院からの簡易ギムザによる迅速なTzanckテストの判定に関するレシピと方法を紹介した演題が選ばれていた。小生も早速メモをとらせていただいた。
 特別講演は「専門医制度の動向について」を拝聴した。皮膚科は基本領域に含まれることから、そのプロフェッショナルオートノミーが認められている。しかし、基本領域に新しく含まれる総合診療専門医の領域はすべての臓器の診療に当たることができるという。皮膚科医は標準的医療の質をより一層向上させていく必要があると思われた。平成28年開始とされる新しい専門医研修制度では医学部での教育と卒後教育をまとめて見直す必要もありそうで、教員としてその動向に注視する必要がありそうだ。
 ランチョンセミナーではアトピー性皮膚炎のセッションで栗原先生の「湿疹学」を拝聴した。まず、アトピー性皮膚炎は医師の「治す」という信念が必要というメッセージには大変共感し、感激した。スキンケアは以前からPro&Conがあり、「皮膚に良いことをする」という介入的側面と、「皮膚によけいなことをしない」という離脱的側面、の相反する2つの概念がある。栗原先生は入浴の功罪についても触れられた。どちらを選択するかは診察によって主治医が決定するべきである。そこにプロフェッショナル性が発揮されるのだと、身の引き締まる思いだった。
 学会最後の、石黒先生と秋山先生をオーガナイザーとしたアトピー性皮膚炎に関するシンポジウムにおいて、私は「汗は増悪因子か」という発表を行い総合討論に含めていただいた。石黒先生の自身のアトピーの経験をまとめられた「アトピー性皮膚炎の一生」、秋山先生のフィラグリン遺伝子診断とアトピー性皮膚炎の予防的介入の可能性に関する可能性、神戸先生は患者さんの治療への恐怖心がちょっとした周囲の意見によって生じてしまう現象を「An apple a day keeps the doctors away」と例えながら患者とのコミュニケーションについてご紹介され、いずれも身につまされることの多いお話であった。石黒先生は患者さんの背中に薬を塗ることで患者の状態がわかるという。私も時々外来で行うが、確かに浸潤の強さ、皮膚の熱、乾燥状態を手で感じることができる。こういうことは若い先生方にも伝えたい。何より、若い先生に是非参加していただきたい学会であった。
 学会期間中は爆弾低気圧の到来ということで、雨風の強い悪天候であった。名古屋城のお堀は桜の花びらで覆われ、幻想的な光景を見せた。月並みであるが、「花に嵐」である。


 ポスター会場ではお茶を一服いただける趣向であった。お茶菓子は学会のためだけに作られた、その名も「もち肌」であった。表面に「日臨皮」という焼き印の入った桜色の大変上品なお菓子であった。このステキなおもてなしには大変な御苦労があったものと推察され、会頭の田中隆義先生のご配慮に感服した。

平成25(2013)年4月7日掲載