学会参加印象記
第21回日本発汗学会総会
8月30日31日
信州大学医学部旭総合研究棟
大阪大学医学部皮膚科学教室
室田浩之

汗を知り、汗に向き合う:日本発汗学会総会に参加して

“Think different”
これは、かつてアップルコンピューターのロゴマークに付記されていた同社のキャッチコピーである。この言葉には私自身、強烈なインパクトを感じており、自身のパソコンのデスクトップ画面にしている。
昨年から参加している本学会に、今年はシンポジストの機会をいただいた。異なる分野の研究内容を拝聴しながら、この”Think different”という言葉が自分の中に沸き起こり、思いつく限りの新しいアイデアを今すぐにでも研究したいという衝動にかられた。発汗学は久野寧先生の書かれた“human perspiration”(Springfield)というすばらしい教科書(英語)がある。1956年に発行されたものだが、私はアメリカから中古本を取り寄せて拝読させていただいた。その内容の濃さに驚愕する。皮膚科領域では現代皮膚科学大系に詳しい汗に関する記述があるが、生理的な面は久野先生による本書が引用されている。私も本書からの受け売りの知識を紹介させていただく機会が多い。その後も発汗学は進歩し続けていることを本会で実感する。特に神経生理学的な側面で顕著だ。皮膚科として、皮膚の専門家でしか思いつかない、そして研究できない事象はないものか?そう、まだまだたくさんあるはずだ。その事は鳥取大学適応生理学の河合康明先生による特別講演「日本発汗学会に求められること」でも紹介された。発汗学の進歩はもちろん、発汗で困っている方へのフィードバックにつながるような新しい話題を提供できるよう研鑽を積んでいきたい。

臨床的には無汗症の原因や背景について多くを学んだ。特に抗てんかん薬による薬剤性や、多系統萎縮症に伴う乏汗症症例について学んだ。2日目の「汗の神経診断学」というシンポジウムでは神経疾患で見られる発汗異常について拝聴した。皮膚科医として発汗異常からこれら神経疾患の発見に貢献できるのではないかと考え、神経疾患のスクリーニング方法について総合討論で質問させていただいた。シンポジストは神経内科の先生方だったこともあるだろう、すでに神経症状が先行しているとの事であった。神経内科を受診される方は確かに神経症状があるから当該科を受診するはずだ。皮膚科専門医が皮膚症状から常に神経症状に眼を向けておく必要はあるだろう。
分節型発汗異常(harlequin症候群, Ross症候群など)の病態に関しては頸部腫瘍、神経鞘腫、内頸動脈解離、サルコイドーシス、シェーグレン症候群など鑑別の必要性をまなび、やはり無汗症は全身のミノール法による検討が最初のスクリーニングとして必須と考えた。

東京医科歯科大学皮膚科の宗次先生からは高IgE症候群でみられた寒冷誘発性発汗過多症の症例提示があった。寒冷刺激が交感神経に入力するという神経のつながり方の異常?やCNTFの関連について説明されていた。Frey症候群に代表されるような外的組織損傷(本例の場合は神経周囲の冷膿瘍など?)に起因するものであろうか、興味深く拝聴した。

信州大学のキャンパスはまだ多くの蝉がケラケラと笑っていた。自然が多く、すばらしいキャンパスだった。私は大学から5分程度浅間山方面にあるいたところの民宿に泊まったので効率よく時間を過ごすことができた。民宿のようなインターネットの無い環境はなんだかとってもリラックスできる。2日目学会の始まる前に大学横の女鳥羽川周囲を少し散策し、適度な疲れと満足感に浸った。丁度、大学病院前を歩いているとドクターヘリが飛びたつところに遭遇した。小生の夜間休日の当直業務の思いも重なり、ヘリに心の中で激励を送った。その空の高さに秋の気配を感じたのだった。 

平成25(2013)年9月1日掲載