皮膚から取り出された顎口虫
(Gnathostoma spinigerum)

産卵された中卵が水中にはいり孵化して第1期幼虫となり、第1期中間宿主ケンミジンコに採取され、脱皮して第2期幼虫となる。第2期中間宿主である淡水産の魚類とくにライギョやドジョウ、さらに両生類のカエル、爬虫類のヘビなどに摂取されて発育し第3期幼虫になり、皮嚢して筋肉内にとどまる。ヒトがこれらの淡水魚や両性類の生身を摂取すると、第3期幼虫は腸間壁を貫いて体内に移行し、皮嚢せず皮膚や皮下組織に至り、発育しながら移動する。ヒトの体内では成熟虫になりえず、第3期または第4期幼虫のままで皮膚の浅い所(主として真皮内)を移動すると線状の皮膚爬行症creeping swellingをおこすことが特徴的である。これらは虫体のアレルギー反応によるもので、局所の好酸球浸潤が強く、末梢血でも好酸球増加、血清IgE値の上昇を伴う。(現代皮膚科学大系 第8巻 130P荒木恒治・田中清隆著より)


この標本はドジョウのおどり食いした患者の皮下から採取した組織(パラフィンブロック)の中にいた虫体を取り出し、走査電子顕微鏡で観察撮影した。標本作成過程で脱パラフィン→水戻→酸化オスミニュウム再固定→脱水→乾燥→蒸着→検鏡と処理しているので状態は悪くいい写真は撮れなかった。


走査電子顕微鏡写真

(撮影倍率X40)
皮膚の中から取り出した
虫体

(撮影倍率X80)
頭の部分がコブラのように
ふくらんでいる

(撮影倍率X110)
顎口虫の頭部

(撮影倍率X350)
顎口虫の口を強拡大