片山一朗7代教授
(平成16年(2004)〜平成30年(2018)
2004年(平成16)、片山一朗が第7代教授として着任し、脈々と続く大阪大学皮膚科学教室の歴史を引き継ぎ、免疫・アレルギーをキーワードとした難治性皮膚疾患の創薬研究の取り組みを教室の大きなテーマとして掲げ、研究、教育、診療を開始した。片山教授は1977年(昭和52)に北海道大学を卒業後、佐野榮春教授時代に大阪大学皮膚科学教室に入局。1980年(昭和55)からロンドン王立外科大学病理学教室(JL Turk教授)に留学し、遅延型アレルギーの発症に関する研究を行った。1982 年(昭和57)大学院修了。北里大学講師、東京医科歯科大学助教授を経て、1996年(平成8)長崎大学皮膚科第11代教授に就任している。写真1は佐野榮春教授が描いた油彩「鏡の中:血管性母斑症」で、学生講義の最初に使うスライドである。片山教授は独断的な解釈で写真右のように翻訳し、学生や新入医局員に伝えてきた。

片山教授時代の教室の特色と運営
大阪大学皮膚科学教室は医学部の開祖、緒方洪庵の適塾の流れをくみ、発展してきた実学の精神が生き生きと受け継がれてきた。日常診療で患者から得られる疑問点を解決する、現時点の医療で治せないような病態の治療法を創出するための研究を行い、患者に還元していく姿勢をモットーに教室員は日夜、診療、教育、研究に取り組んできた。医学部研究棟10 階にある皮膚科学教室の医局からは万博記念公園と大阪市が一望できる。景色の中でひときわ目立つ万博記念公園のシンボル「太陽の塔」は、透徹した、しかし皮膚科医の仕事とは?

・皮膚に現れた疾患を治療する
・皮膚の下にある病気を見つけ、治療する
・皮膚の美(健康)を保つ
・皮膚疾患の啓蒙と予防
・ 皮膚疾患の新しい診断・治療の開 発

「鏡の中―血管性母斑症」(佐野榮春1995)写真1

慈愛に満ちた大きな眼で未来を見据えている。そんな「太陽の塔」とともに、ここ千里の丘から世界に情報を発信し、教室員そして関連病院、同門の皮膚科医が一丸となって新しい時代の皮膚科学を創り出すことを教室の大きな目標としてきた。大阪大学皮膚科ホームページは西田健樹技官がその立ち上げから更新まで一手に引き受け、日本そして世界に情報を発信しており、そのアクセス回数は現時点で140万回を超えている。片山が教授着任後、インターネットによる情報交換は驚異的な進歩を遂げ、論文の投稿、患者の情報入手、文献のダウンロードなど24時間対応で世界とつながる時代となり、その先駆けとなるホームページの作成と情報発信は他の大学の良いモデルとなっている。女性医師支援、研修プログラム、医局員コラム、患者会への案内なども掲載しており、ホームページを見て患者が受診することも多く、教室の研究に興味を持ち研究を手伝う学生、他学部からの修士入学希望者も出てくるようになり、教室の大きな業績となってきた。ホームページ効果もあり、出身大学の多様さは全国でも屈指で、ママさん大学院生や修士、海外からの留学生など年齢、国籍所属も異なる人達が、厳しいけれども楽しい研究生活を過ごしている。以下、皮膚科教室の動向を記録として残す。

1)スーパーローテートの開始とその影響
スーパーローテート制度が開始された2004年(平成16)は、片山が教授として着任した年であり、以後2 年間は新卒の入局者が0 となり、全国的にも教室運営にも大きな支障を来した医局が多く見られた。以後、マスコミ報道に見られるように、都市部と地方、診療科間で医師の偏在の見られることが国民にもはっきり分かるようになり、結果として国民、医師、行政担当者それぞれが不利益を被る時代に入った。新研修制度開始後は大学での勤務より市内の関連病院を希望する者が多く、また大学自体の後期専攻医枠も定員があるため病棟担当医も含め、一人の医師にかかる負担が目に見える形で増加
している。特に大阪大学の診療圏では、重症患者やいろいろな意味で対応の難しい患者が紹介されてくる関係でどの診療科も勤務医師の疲弊が目につく。また現在でもその解決策が見えてこない、女性医師の復帰支援や中堅医師の離職、大学院進学や海外留学希望者の減少が全国的に顕在化してきているが、そのような中、大阪大学皮膚科には毎年2 〜 3 名の大学院生が入り、基礎教室、あるいは皮膚科教室で基礎研究を行い、大学院修了後は海外に留学する者も一定数見られるようになった。特に金田講師は全国の大学に勤務する女性皮膚科医のロールモデルとして、現在でも一番早く出勤し、最後に鍵をかけて帰る生活を続けており、大阪大学皮膚科がここまで成長してきたのは、金田講師の尽力のおかげと感謝している。また、吉川教授時代に始まった大学の法人化や独立採算を目指した議論は全国規模で多くの問題点が噴出したが、幸い大阪大学医学部皮膚科学教室の場合は関連病院も含め、人事にも理解を示してもらえ、売り上げなどにも干渉されず、むしろ女性医師の復帰にも理解を示してくれる病院が多く、吉川教授時代のマンパワーは維持できている。

2)臨床と研究―臨床の視点からの創薬研究
以下、片山教授時代の研究の概略を紹介する。その詳細や公表論文は大阪大学皮膚科ホームページを参照されたい。

@皮膚の恒常性維持機能の新たな探索
皮膚は精緻な恒常性維持機構を持ち、その破綻が多様な皮膚疾患の原因や悪化因子となる。特に研究の中心であるアトピー性皮膚炎は、皮膚の恒常性の破綻が、その発症、進展に大きな役割を果たしていると考えられている。表皮細胞は生体の最外層でのストレス侵襲に対する非常に精緻なセンサー機能を持ち、恒常性維持のための生体応答が進行する。片山教授らは表皮ケラチノサイトがサブスタンスP を産生することを証明したが、さらに皮膚はケラチノサイトがTRPV1,TRPV3, TRPV4 などの温度センサーとしてのイオンチャンネルを発現し、第三の脳ともよばれる。これらの研究は皮膚が中枢とは別個の、独自の自律機能を持つことを示しており、アトピー性皮膚炎などの発症機序を考える上で重要である。寺尾特任助教、越智助教等は新たな皮膚の機能として表皮細胞が皮膚という末梢組織で自律的にコルチゾールを活性化する酵素(11βhydroxysteroid dehydrogenase-1, 11βHSD-1)を持ち、恒常性の維持機能を有していることを表皮特異的11βHSD-1ノックアウトマウスの作成により、世界で初めて明らかにし、さらにこのマウスを用いて皮膚の炎症の制御、創傷治癒、皮膚老化などにおいてこの11βHSD-1が関与することを相次いで報告し、内外で注目を集めている。さらに現在この酵素の抑制あるいは誘導物質を探索し、生体由来の抗炎症あるいは抗老化作用薬としての創薬研究を行っている。室田准教授は大学院生の松井、小野、山賀を指導し、発汗現象の3 次元画像を世界で初めてイメージングす
ることに成功し、発汗の分子メカニズムやアトピー性皮膚炎での悪化因子としての汗の
解析を進行させている。

A皮膚アレルギー・自己免疫疾患関連の研究
アトピー性皮膚炎や重症薬剤アレルギー、職業性皮膚疾患は他科や社会と密接に関連する重要な疾患である。その病態や根本的な治療法の開発には自己免疫疾患の病態解明が不可欠である。室田准教授、中川助教、木嶋晶子、小野慧美、中野真由子大学院生、橋彩医員によりアトピー性皮膚炎の病態解析や疫学研究が、薬剤アレルギーの診断、病態解析は小豆澤宏明助教、花房崇明、加藤健一大学院生により、接触皮膚炎の研究は村上有香子医員、中野真由子大学院生により進められている。片山教授は2008 年(平成20)から厚生労働省の「アレルギー疾患のダイナミックな変化とその背景因子の横断
的解析による医療経済の改善効果に関する調査研究」班の班長を務めた。この班研究は思春期アレルギー疾患の動態やアトピー性皮膚炎の悪化因子とその対策、医療経済学的に効率的なアレルギー疾患の治療を行うことにより医療費の削減に大きく貢献しうることを明らかにし、さらに大阪大学保健センターの瀧原圭子教授との共同研究で、アレルギー疾患のコホート研究として注目を集めている。室田准教授はまた、アトピー性皮膚炎の「痒み」のメカニズムを探索する過程で暖まると皮膚が痒くなる機序として、アーテミンとよばれる新たな神経成長因子が関与することを報告し、アトピー性皮膚炎病変
部でその蓄積が亢進していることを明らかにした。大学院生の山賀康右は大阪大学の分子生体情報学の月田早智子教授との共同研究で、タイトジャンクション構成蛋白であるクローディン1 の発現量に応じてアトピー性皮膚炎の症状が変化することを、マウス個体を用いて初めて報告した。この成果はアトピー性皮膚炎のバリア機能障害に対する治療介入や創薬研究に大きな貢献をすると予想される。片山教授は2009年(平成21)から尋常性白班の研究に取り組み、厚生労働省の「白斑の診断治療ガイドライン」研究班の班長を務め、STAT3活性化とIL17A が自己免疫性白斑の発症に関与するという新たな病因論の提唱と新規治療薬の開発研究、白斑の診断治療ガイドラインの策定を行い、その成果は今まで明確な治療ガイドラインがなかった白斑の治療に大きなインパクトを与えた。またフランス、ボルドー大学のAlan Taieb教授やローマのMauro Picard 教授らと世界の白斑治療ガイドラインの共同研究を行っている。2015 年(平成27)には韓国全南大学李教授や台湾高雄医学院の藍教授らと東アジア白斑学会を設立し、2018年(平成30)に大阪にて第2回大会の会頭を務めた。さらに2014年(平成26)には、自己免疫性白斑の発症にCD8陽性メラノサイト関連抗原反応性T 細胞をAnergic に変換させるTreg の減少が重要であることを、制御性T 細胞の研究で世界的に有名な坂口志文教授と「Science」誌に発表し、これらの功績から色素細胞研究の功労者に贈られる小川・清寺賞を2016年(平成28)に受けている。2014 年(平成26)7 月に大きな社会問題となったK社の美白化粧品による白斑は日本皮膚科学会でも特別委員会が設置され、片山教授、種村講師がアドバイザー、委員として参加した。この活動を通じて、化粧品誘発性白斑の病因、治療法などに関する研究を行い、荒瀬規子助教は美白剤によるNF-κBの抑制により紫外線誘発性のメラノサイトのアポトーシスが促進され白斑が生じる可能性を、特任研究員の楊怜悧は美白剤によりオートファジーの阻害が生じ、白斑が生じる可能性を報告した。

B膠原病、皮膚血管・結合組織代謝関連の研究
佐野榮春第5 代教授から引き継がれている教室の重要な研究テーマである。室田浩之准教授、寺尾美香特任研究員、壽順久助教、北場俊助教、山岡俊文医員、楊伶俐特任研究員、楊飛、松井佐起大学院生、加藤亜里沙修士らにより研究が進められた。片山教授らはブレオマイシン誘導性の強皮症モデルを1999年(平成11)に報告し、その方法は世界的に認知され使用されている。その研究の延長線上でIL-6が皮膚の硬化や肺の線維化に関与していることが明らかになった。さらに、免疫内科の嶋講師との共同研究で抗IL-6受容体抗体(アクテムラ)により強皮症の硬化の改善作用が見られたことから、臨床治験が開始されている。強皮症病変部では発症初期に肥満細胞の増加が見られることを報告しているが、特任研究員の楊怜悧はヒスタミンが新たな細胞間基質ペリオスチンを誘導し、AKT依存性に1型コラーゲンの合成を誘導することを見い出した。この現象はアトピー性皮膚炎や気管支喘息などの組織リモデリングにヒスタミンが重要であることを示している。

C悪性腫瘍、遺伝性疾患に対する創薬研究
遺伝子治療学教室の金田安史教授が開発した、悪性黒色腫に対するHVJ エンベロープを用いたFirst in human study が進行中で、2012 年(平成24)から厚生労働省の創薬事業に採択され、明日の治療法の開発研究が開始された。このHVJによる抗腫瘍効果の発現機序に関する研究および臨床実践は種村講師が行っている。結節性硬化症はHamartin, Tuberin と呼ばれるガン抑制遺伝子の変異により発症す
る先天性疾患で、多彩な皮膚症状、肺、腎、中枢神経などの腫瘍や精神神経症状が見られる。金田眞理講師、北山和子、加藤希世子、熊谷牧子により、日本はもとより海外からも受診する患者の診療、基礎研究が行われており、2012 年度からは厚生労働省よりmTOR阻害剤の外用剤の創薬開発に関する大型プロジェクトが開始され、良好な結果を得て2018年(平成30)6月からは本邦で市販され、現在海外へ転用中である。遺伝性の疾患が外用薬で治癒するという画期的な研究であり、大阪大学医学部皮膚科学教室発の薬剤として世界に向けて発信している。さらに2017年(平成29)の春からは、同外用薬によるNF1の腫瘍に対する大型プロジェクトがAMEDの補助のもと開始されている。

3)教室主催の学会と学会業務:未来に向けて
片山教授は在職中に下記の学会を会頭として主宰し、多くの成果を残した。2015年(平成27)9月、奈良にて8th World Congress of Itch(WCI)の会頭を務め、海外も含め皮膚科医以外にも基礎の生理、薬理、解剖学者など240名を超す参加者が奈良の「春日野国際フォーラム甍」に集い、痒みに関する最新の知見に関する研究発表、情報交換を行った。

開催学会
2005年 第10回アトピー性皮膚炎治療研究会、第392回日本皮膚科学会大阪地方会
2006年 第36回日本皮膚アレルギー学会、第31回日本接触皮膚炎学会
2009年 第412回日本皮膚科学会大阪地方会
2010年 第109回日本皮膚科学会
2012年 第24回日本アレルギー学会、第433回日本皮膚科学会大阪地方会
2013年 第36回皮膚脈管膠原病研究会、第25回日本色素細胞学会
2014年 第39回日本研究皮膚科学会
2015年 8th WORLD CONGRESS ON ITCH、第451回日本皮膚科学会大阪地方会
2016年 第24回日本発汗学会、第4回日本結節性硬化症学会(金田眞理 会頭)
2018年  The 2nd Meeting of East Asia Vitiligo Association The 1st Meeting of Japanese Society for Vitiligo

博士号授与者
2004 年 吉田佐保、2005 年 種村篤、宮島進、2006 年 澄川靖之、2007 年 中島武之、
2009 年 大畑千佳、寺尾美香、2011 年 中川幸延、Abdel Latif Mostafa Ibrahim Attia、清原英司、2012 年 北場俊、壽順久、花房崇明、2013 年 楊伶俐、木嶋晶子、2014年 松井佐起、田中まり、2015年 越智沙織、西岡めぐみ、2016年 田上尚子、田原真由子、2017 年 加藤健一、2018 年 山賀康右、楊飛(Yang Fei)、小野彗美、松本 晃、(予定)村上有香子

留学生
(阪大→海外)
2002 年 山口裕史(米)、2003 年 佐野栄紀(米)、吉良正浩(米)、2004 年 中島武之(米)、2005 年 小豆澤宏明(独)、種村篤(米)、2011 年 梅垣知子(米)、2012年 清原英司(米)、中川幸延(米)、2013年 壽順久(米)、花房崇明(米)、2017年山賀康右(米)
(海外→阪大)
2007 年 Abd El-Latif,Mostafa Ibrahim(埃)、2010 年 楊伶俐(中国)、2015 年楊飛(中国)

臨床、研究での受賞
2006年 第58回日本皮膚科学会西部支部(西村由佳理)
2007年 第7回ガルデルマ賞(小豆澤宏明)、第31回日本小児皮膚科学会(谷守)、第59回日本皮膚科学会西部支部(西村由佳理)
2009年 7th World congress on Melanoma and 5th Congress of the European Association of Dermato-Oncology(種村篤)
2010年 第109回日本皮膚科学会(種村篤・糸井沙織)
2011年 第41回日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会(花房崇明)
2011 ESDR/JSID Young Fellow Collegiality Awards(花房崇明)、第26回日本乾癬学会(糸井沙織)
2012年 第111回日本皮膚科学会(寺尾美香)、第6回加齢皮膚医学研究基金(花房崇明)、第42回日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会(荒瀬規子)、第105回近畿皮膚科集談会(種村篤)
2013年 第112回日本皮膚科学会(早石祥子)、第86回日本生化学会(油谷美寿季)、第14回ガルデルマ賞(室田浩之)
2014年 第113回日本皮膚科学会(藤盛裕梨)、第10回加齢皮膚医学研究会(越智沙織)第23回コスメトロジー研究振興財団(室田浩之)
2015年 第114回日本皮膚科学会(林美沙)
2016年 2015年度第6回小川・清寺記念賞(片山一朗)、第32回日本臨床皮膚科医会(林美沙)SID/JSID Young Fellow Collegiality Awards2016(山賀康右)、第115回日本皮膚科学会(加藤健一)、平成27年度「皮膚の科学」(東典子・藤盛裕梨)
2017年 第81回日本皮膚科学会東部支部(林美沙)、第69回日本皮膚科学会西部支部(高藤円香)
2018年 第117回日本皮膚科学(荒瀬規子・中西雅也)、平成31年度「皮膚の科学」(花岡佑真)

大阪大学皮膚科学教室出身教授
明治36 年 櫻根孝之進 大阪大学、大正15 年 佐谷有吉 大阪大学、昭和16 年 谷村忠保 大阪大学、昭和20年 西村長応 和歌山県立医学専門学校、昭和21年 櫻井方策 阪大微生物病研究所、昭和23年 櫻根好之助 大阪市立大学、昭和23年 上月実 神戸医科大学、昭和24 年 石川昌義 奈良県立医科大学、昭和31 年 藤浪得二 大阪大学、昭和35 年 坂本邦樹 奈良県立医科大学、昭和35年 西村真二 阪大微生物病研究所、昭和37年 佐野榮春 神戸大学、昭和38年 田村峯雄 大阪市立大学、昭和46年 伊藤利根太郎 阪大微生物病研究所、昭和48年 藤浪得二 兵庫医科大学、昭和49年 佐野榮春 大阪大学、昭和51年 三木吉治 愛媛大学、昭和52年 相模成一郎 兵庫医科大学、昭和55年 高安進 大分医科大学、昭和60年 吉川邦彦 大阪大学、平成元年 白井利彦 奈良県立医科大学、平成2年 西岡清 東京医科歯科大学、平成5年 喜多野征夫 兵庫医科大学、平成5年 深海浤 千葉大学、平成7年 橋本公二 愛媛大学、平成8年 片山一朗 長崎大学、平成9年 竹田潤二 大阪大学、平成9年 田原真也 神戸大学、平成11年 細川亙 大阪大学、平成12
年 宮川幸子 奈良県立医科大学、平成15年 松田健 新潟大学、平成16年 片山一朗 大阪大学、平成17年 横関博雄 東京医科歯科大学、平成17年 垣淵正男 兵庫医科大学、平成18 年 板見智 大阪大学*、平成19 年 佐野栄紀 高知大学、平成19 年 浅田秀夫 奈良県立医科大学、平成19 年 松本邦夫 金沢大学がん進展制御研究所、平成19 年 矢野健二 大阪大学*、平成22年 玉井克人 大阪大学*、平成27年 高田章好 大阪大学*、平成29年 井川健 独協医科大学、平成30年 室田浩之 長崎大学(*印は寄附講座教授。特任教授は除く。)

片山教授が2004年(平成16)着任時に挨拶文で述べた「優れた基礎研究をさらに推進してくれる人材を育成し、その成果を臨床にそして患者さんにフィードバックさせて行くのが私に課せられた大きな使命と考えております。このような考え方に立ち、教室員共々大阪発の皮膚科学を世界に発して行きたいと考えております」という抱負がどの程度達成できたかの評価は今後問われるところだが、現在の関連病院の充実度が全国一(関連研修施設数など)であることから分かるように、スーパーローテート開始時に全国で吹き荒れた、中堅医師の離職や勤務医の減少という危機を乗り切り、多くの優れた皮膚科医を育成していただいている関連病院の部長(吉川―片山時代)にもお礼を述べたい。

関連病院の動向
教室から常勤医師を派遣していた病院(教室関連病院/現部長・医長・主任)は当時の名称で、国立大阪病院(現国立病院機構大阪医療センター/小澤健太郎)、国立大阪南病院 **(現国立病院機構大阪南医療センター/田中康之)、国立南和歌山病院 *(現国立病院機構南和歌山医療センター/南宏典)、大阪府立病院(現大阪府立急性期医療センター/林美沙)、大阪府立羽曳野病院(現大阪府立呼吸器アレルギーセンター/片岡葉子)、箕面市立病院 *(松本千穂)、市立池田病院(吉良正浩)、市立豊中病院(横見明典)、東大阪市立総合病院 *(現市立東大阪医療センター/猿喰浩子)、八尾市立病院(高木圭一)、市立堺病院(現地方独立行政法人堺市立病院機構堺市立総合医療センター/白井洋彦)、大阪厚生年金病院 *(現JCHO大阪病院/竹原友貴)、関西労災病院(福山國太郎)、大阪労災病院(土居敏明)、大阪船員保険病院 *(現大阪みなと中央病院/三浦宏之)、公立学校共済組合近畿中央病院 *(樽谷勝仁)、大手前病院(園田早苗)、大阪警察病院(坂井浩志)、住友病院(庄田裕紀子)、市立吹田市民病院(西野洋輔)、NTT 西日本大阪病院(調裕次)、日生病院 *(東山真里)、大阪中央病院 ***、愛染橋病院 *、**、多根総合病院 *、岸和田徳州会病院 *(駒村公美)である。*印は吉川教授の在任期間に実現または復活したものである。他にも非常勤で対応していた施設、いったん派遣したものの人材面の理由で止むなく引き上げた施設も幾つかある(**印)。***印は片山教授時代から派遣。ほとんどが複数スタッフからなる、今では全国的にも有数のこれら多数の病院の皮膚科診療活動を維持できたのは、各病院に勤務していた先生方の頑張りと、教室の准教授、医局長の苦労の賜物である。2004 年(平成16)のスーパーローテート開始後は初期研修医の職業感、病院側からの経営上の要求はシビアとなり、対応には大いに苦労している。
大阪大学150周年記念誌より