大阪大学医学系研究科皮膚科学講座非常勤講師
財団法人住友病院皮膚科部長
佐野栄紀(さのしげとし)
1・発表内容
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著者:
・佐野栄紀(財団法人住友病院皮膚科部長
大阪大学医学系研究科皮膚科学講座非常勤講師)
・板見 智(大阪大学医学系研究科皮膚科学講座助教授)
・Chan, Carbajal, Kiguchi,
Clifford,
DiGiovanni(テキサス大学)
・Nickoloff(シカゴメディカルセンター)
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成果
乾癬は欧米において全人口の約2%が罹患する非常に頻度の高い慢性の皮膚疾患であり、近年本邦でも患者数が増加中である。治療は、ステロイドという外用薬や紫外線療法などが有効だが完全寛解はまれで長期にわたる罹患例が多い。乾癬は表皮の異常な増殖とリンパ球など免疫細胞の著明な皮膚への集積を特徴としているが、病因は不明であり表皮か免疫細胞かどちらの異常によるものかは論争の的であった。大阪大学大学院医学系研究科皮膚科学講師(現在、住友病院皮膚科部長)の佐野栄紀医師(47歳)、同助教授の板見 智医師(52歳)とテキサス大学、シカゴメディカルセンターの共同研究チームは、表皮細胞のスタット3というシグナル伝達蛋白の活性化に引き続き皮膚リンパ球が活性化する結果乾癬が発症する事実を明らかにし、12月12日付けネーチャーメディシン電子版に発表した。まず、佐野医師らはほとんどの乾癬患者の表皮でスタット3が活性化していることを発見した。そこで同医師らは予め活性化させたスタット3を表皮で発現するトランスジェニックマウスを作成したところ、このマウスは乾癬を発病しその発症の過程で皮膚リンパ球の活性化を伴うことがわかった。すなわち表皮細胞でのスタット3活性化と皮膚リンパ球活性化いずれもが乾癬発症には不可欠であることが明らかになった。さらに、スタット3の作用を阻害するデコイとよばれる核酸をこのマウスの皮膚に塗布すると乾癬の発症が阻止され、あるいは病変の軽快をみた。これは皮膚のスタット3の機能を阻害する戦略が新たな乾癬の治療法として有用であることを示し、今後臨床応用に向けて大いに期待される。
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2・発表日時(オンライン出版日時)
日本時間:2004年12月13日午前3時(アメリカ東部時間12日午後1時)
http://www.nature.com/nm/
3・発表者
佐野栄紀(さの しげとし)
4・取材等に係る連絡先
佐野栄紀
財団法人住友病院皮膚科部長
(大阪大学大学院医学系研究科皮膚科学講座非常勤講師)
〒530-0005 大阪市北区中之島5-3-20(財団法人住友病院)
TEL:06-6443-1261、FAX:06-6444-3975
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※ご注意:この発表は基礎研究の為一般の方のお問い合せはご遠慮下さるようお願い致します
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