最終更新日 2000.1.28
乾癬の治療






















1999年12月11日(土) 大阪大学医学部講堂にて大阪大学医学部皮膚科の小林照明先生にビタミンD(ボンアルファ)の作用機序や治療、使用上の注意、副作用また来春に販売を予定している 高濃 度ビタミンD(ドボネックス)などについて多くのスライドを使いわかりやすく講演して頂きました。ここでは講演を簡単にまとめたものを掲載しています。少々難しいところもありますがこの講演のわかりやすい解説は大阪乾癬患者友の会会員へ送られる会報に掲載される予定ですのでそちらをご参照下さい。


現在:小林皮フ科クリニック院長(皮フとビタミン研究所)

乾癬のビタミンD3外用療法
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 最近の皮膚科での治療は、治りにくい病気である尋常性乾癬に対しいろいろな新しい治療法の方法が登場しています。その中でもビタミンDを使ったお薬は、米国、ヨーロッパを中心にたくさん使われており、日本でも今後乾癬の治療の中心となるものと思われます。ここではビタミンDの概略について簡単に説明いたします。

最近の研究で、活性型ビタミンD3は、血液の中のカルシウムの濃度を調節するだけではなく、細胞を増やしたり、成長させたりするための重要な役割をビタミンDが行っている事がわかってきました(文献1-3)。体の中にある活性型ビタミンD3の1,25(OH)2D3は細胞質内のビタミンDの受容体と一緒になり、細胞の中心にある核へ移りDNA(遺伝子)にいろんなと命令を下します。この働きが乾癬の病気の原因でである皮膚の細胞(表皮ケラチノサイト)の増殖亢進、分化障害という現象を正常化すると考えられています。ビタミンDの薬は乾癬の患者さんに使用されやすいように血液の中のカルシウム濃度に及ぼす影響が少なく、薬の代謝、排泄が速いように本来の1,25(OH)2D3の構造が少し変えられて作られています。また内服薬では皮膚内で十分な有効濃度に達しないため、主に外用製剤として開発されています。欧米においては活性型ビタミンD3誘導体であるcalcipotoriolまたはcalcipotriene軟膏(1g中に50ug含有)が広く使用されています。calcipotoriolは、表皮細胞に対する効果は1,25(OH)2D3とほぼ同等でありますが4)、カルシウム代謝に及ぼす影響は1/100に抑えられています。海外の多くの国で、Dovonex, Daivonex, Psorcutanの名称で使われており、国内においてもいよいよ2000年春には保険適応が認められる予定であります。現在国内で用いられているTacalcitol軟膏(ボンアルファー軟膏)と同程度の頻度で副作用が報告されており5)、顔面への使用は避けることとなっています。PUVA, UVB, チガソン、シクロスポリンとの併用により、良い治療効果を上げることも報告されています。また重症度に応じてステロイド外用剤との適宜併用による良好な結果も知られています。これまで国内では、2ug/g Tacalcitol軟膏(ボンアルファー軟膏)が臨床で用いられてきましたが、最近顔面や被髪部位への外用に適したクリーム発売され、さらに1月よりローションも発売予定であり、ますます選択の幅が広がってきました。更に近い将来には25ug/g OCT(22-Oxacalcitriol)軟膏も登場することが予想され、効果を更に確実にするため10倍濃度の20ug/g Tacalcitol軟膏も開発中で、日本においてもビタミンD3製剤が乾癬外用療法の主役となる時期が、遠からず訪れることでしょう

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文献

1)Kobayashi T et al : J. Dermatol. 17, 707-709, 1990
2)Kobayashi T et al : Biochem. Biophys. Res. Comm. 196, 487-493, 1993
3)Kobayashi T et al : J. Dermatol. Sci. 17, 108-114, 1998
4)Kobayashi T et al : J. Eur. Acad. Dermatol. Venereol. 5, 132-138, 1995
5)Veien NK et al : Br. J. Dermatol. 137, 581-586, 1997