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第100回近畿皮膚科集談会特別講演

 

「自然免疫による病原体認識機構」
 大阪大学微生物病研究所自然免疫研究分野
 教授 審良(あきら)静男先生

 自然免疫は、従来まで非特異的な免疫反応と考えられ、哺乳動物においては獲得免疫の成立までの一時しのぎと考えられてきた。しかし、最近、Toll-lie receptors(TLRs)を介して、自然免疫系の細胞も、病原体を特異的に認識して、炎症・免疫応答をひきおこすことが判明した。TLRsは膜受容体で、細胞表面またはエンドゾームに発現しており、哺乳動物では12のファミリーメンバーからなっている。ノックアウトマウスもすべて作成され、それらの解析からほとんどのTLRの認識する病原体構成成分があきらかとなっている。TLRは、細菌、真菌、原虫、ウイルス由来の成分によって活性化され、あらゆる病原体の体内への侵入を感知する受容体であることが判明した。各TLRのシグナル伝達経路も異なり、最終的に異なる遺伝子発現を誘導する。さらに重要なことは、TLRを介しての自然免疫系の活性化が、獲得免疫の誘導に必須であることがあきらかになったことである。このため、従来の免疫理論の大幅な修正がせまられるようになり、感染症に対するワクチン、アレルギー疾患、癌免疫に対する考え方も大きく変化してきている。最近、TLR以外にも細胞質内で病原体を認識する分子が存在することがあきらかとなった。このように、哺乳動物は、細胞膜受容体と細胞質内受容体の両方を用いて病原体の体内への侵入を感知していることがあきらとなりつつある。本講演では、特に自然免疫系による病原体認識のメカニズムについて概説してみたい。

 

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